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本を読み続ける中小企業経営者の読書記録

『幸せになる勇気』のレビュー

      2020/05/23

『幸せになる勇気』とは

タイトル: 幸せになる勇気 -自己啓発の源流「アドラー」の教えII
著者:岸見一郎, 古賀史健
出版社:ダイヤモンド社 (2016/2/26)

おススメ度

★★★★★
(5点/5点満点)

『幸せになる勇気』の概要

「悪いあの人、かわいそうな私」

・哲学と宗教の違いは「物語」の有無である。
 →哲学は「学問」というよりも「生きる態度」である。
・教育の目標は「自立」である
・「尊敬」とは「ありのままにその人のことを見る」ことである。
 →教育の入り口は、教えられる側に対する尊敬の念を持つことから
 ⇒尊敬なきところに良好な人間関係は生まれない(言葉も届かない)
・「他者の関心事」に関心を寄せることが尊敬の具体的な第一歩
 →「他者の目で見て、他者の耳で聞き、他者の心で感じること」が必要
 →「もしも私がこの人と同じ種類の心と人生を持っていたら?」と考える
 ⇒これが「共感」(他者に寄り添うときの技術であり態度)である
・あなたの「いま」が過去を決める
 人間は誰もが「わたし」という物語の編纂者であり、
 その過去は「いまのわたし」の正当性を証明すべく、自由自在に書き換える。
・カウンセリングで使用する三角柱
 「悪いあの人」
 「かわいそうな私」
 「これからどうするか」←語り合うべきはこの一点

なぜ「賞罰」を否定するのか

・教室を一つの民主主義国家と考える
・「知らない」という事実をもって厳しく責めるのは理にかなわない話
 →叱責ではなく、教えることが大事
・言葉でコミュニケーションをとることを煩わしく感じ、
 手っ取り早く屈服させようとして叱っているだけ。
・問題行動の背景にある5段階の心理(目的)
 ①賞賛の欲求
 ②注目の喚起(褒められなくてもいいからとにかく目立とう)
 ③権力争い(反抗、挑発)
 ④復讐(相手が嫌がることを繰り返す[自傷行為も])
 ⑤無能の証明→もはや専門家に頼るしかない
・「怒り」とは人と人とを引き離す感情である
・変えられないものに執着するのではなく、眼前の変えられるものを直視する
 (ニーバーの祈り)
・自らの保身のために自立されることを恐れて子供を支配している
・感謝を期待するのではなく、「自立」という大きな目標に
 自分は貢献できたという「貢献感」をもつ
・子供を放置するのではなく、決断を尊重し支援する
 (その中に幸せを見出す)

競争原理から協力原理へ

・褒賞が競争を生む(他者は全て敵というライフスタイルになる)
・ライバルという盟友の価値は認めるが、競争する必要はない
・「わたしであること」の勇気
 →承認には終わりがない(もっと褒められることを永遠に求め続ける)

 ※わたしの価値を他人に認めてもらうこと→「依存」
  わたしの価値を自らが決定すること→「自立」
 ※人と違うことに価値を置くのではなく「わたしであること」に価値を置く

・「メサイヤコンプレックス」
 他人を救うことで自らが救われようとする
 自分を一種の救世主に仕立てることで自らの価値を実感しようとする
 →不安を抱えた人間による救済は自己満足を脱することは出来ない
・教育は「仕事」ではなく「支援」である
 →ひとりの友人として向き合うことが大事
・教育に失敗し、幸せを実感できない理由
 →「仕事」「交友」「愛」の3つからなる人生のタスクを回避しているから

「与えよ、さらば与えられん」

・全ての喜びもまた対人関係の喜びである
・個人が社会で生きていくにあたって直面せざるを得ない課題=人生のタスク
 「仕事の関係」(信用の関係)
 「交友の関係」(信頼の関係)
 「愛の関係」
・なぜ「仕事」が人生のタスクになるのか
 →生存に直結した課題(食うために働く、善悪を超えた結論)
 →仕事を成立させる対人関係
 →「分業」という画期的な働き方のために「信用」必要
・いかなる職業にも貴賎はない
 →全ての仕事は誰かがやらなくてはならない
 ⇒人間の価値はどんな仕事に従事するかで決まるのではなく
  どのような態度で取り組むかで決まる
・他者のことを信用できるか否かは
 他者のことを尊敬できるか否かにかかっている
・先に信じることが大事
 →本当の信頼は能動的なかかわりである

※どんな相手でも尊敬を寄せ、信じることはできる
 (決心ひとつ、勇気の問題)
 人の非難ばかりしている人は対人関係に踏み出そうとしていないだけ

愛する人生を選べ

・愛は「落ちるもの」ではない
 (それはカメラが欲しいというのと同じ[所有欲・征服欲の類])
 →意志の力によって「築き上げる」ものである
・愛とは「二人で成し遂げる課題」である
 →成し遂げるものは「幸福」
 →「幸福」とは「責任感」である
 →「私は誰かの役に立っている」と思えたときに自らの価値を実感する
・「自立」とは自己中心性からの脱却である(人生への態度の問題)
・本当の愛を知ったとき、人生の主語は「わたし」から「わたしたち」に変わる

新たに得られた知識・情報・気づき・考え方など

  • 哲学と宗教の違いに関する考え方
  • 三角柱の話(これからどうするか、にフォーカスすることが大事)
  • メサイヤコンプレックス(不幸を抱えた人間による救済は自己満足)
  • 人間の価値はどのような態度で仕事に取り組むかで決まる、という考え方
  • 「愛」は意志の力によって「築き上げる」ものである

『幸せになる勇気』を読んで実行すること

  • 自分から(アドラー的な意味での)尊敬をするようにする

『幸せになる勇気』はこのような人にお勧めします

ベストセラーとなった「嫌われる勇気」の続編で、こちらも売れているようですね。
「嫌われる勇気」が面白かったので、こちらも期待して読みました。

「嫌われる勇気」でアドラーの考え方に影響を受けた青年(学校の教師)が、
教育現場という現実のなかで実践しようしたところ、うまくいかずに挫折。
逆ギレ状態で哲人とさらなる問答をする、というところから始まります。

相変わらず青年の哲人に対する挑発的な暴言と自虐が面白く、
青年の発言を読んでるだけでも笑えてしまうところがすごいですね。

『嫌われる勇気』だけでは青年のように消化不良になりそうなところに
『幸せになる勇気』でアドラー心理学の更なる本質に迫ってダメ押し
という感じでしょうか。

たしかにアドラー心理学の考え方を実社会で適応していくのは
それほど簡単ではないですよね。
青年と同じような疑問や葛藤が生じることは当然かもしれません。
そんな悩みに、今回もあの哲人が期待通りに導いてくれます。

この本は先に「嫌われる勇気」を読んでいることが前提となっている気がするので、
「幸せになる勇気」だけを単独で読むと価値は半減すると思います。
逆に続編としてセットで読むと、アドラー心理学への理解が相当深まると考えられます。
いずれにしても読者の人生に影響を与える可能性のあるシリーズだと思います。
やっぱりこれは売れますね。さすがです!

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!

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