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本を読み続ける中小企業経営者の読書記録

『なぜ部下とうまくいかないのか』のレビュー

      2020/05/23

『なぜ部下とうまくいかないのか』とは

タイトル: 組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学
著者:加藤 洋平
出版社:日本能率協会マネジメントセンター (2016/3/24)

おススメ度

★★★★☆
(4点/5点満点)

『なぜ部下とうまくいかないのか』の概要

何をすれば関係は良くなるのか(成人発達理論とは何か)

・成人してからも人は成長する(視野の拡大)
・人はそれぞれ固有の「レンズ」を持つ
 →レンズの差異=「意識の段階」「レベル」
 ⇒自分より上の意識段階は理解できない
・レンズに質的な差異があるのと同様に、器にも大きさという差異がある
 →器が大きいと私達を取りまく「曖昧なもの」をより受容できるようになる
・成人以降の「四つの意識段階」がある(キーガン)
・「主体客体理論」
 →意識の成長発達が進むほど認識世界が広がり、
  これまで捉えられなかったものが見えてくる。
 (客体化できる範囲が広がる)

発達段階②:自分に関係することにしか関心を寄せない部下(道具主義的段階[≒利己的段階]への対処法)

・自分のために他者を道具のようにみなす
・二分法的な世界観をもっている
・自分以外の他者がどのように考えているか、どのような感情を持っているか
 というような「二人称の視点」が十分に備わっていない
 ⇒自分中心の視点から、一歩離れた視点をとってもらう問いかけを投げる
・「ビアジェ効果」:無理に成長発達を促すとどこかで成長が止まってしまう
・人は置かれている状況(役割など)が変化することによって
 意識段階が変化することもある。ただ、意識段階は極端には変わらない。
 (※「意識の重心」があるから)

発達段階③:上司には従順だが意見を言わない部下(他者依存段階[≒慣習的段階]への対処法)

・組織、集団に従属し、他者に依存する形で意思決定する
・自己認識が他者や所属集団によって定義される
 →自分独自の価値体系がまだ十分に構築できていないため、
  自分の意見を表明することが難しい
 ⇒仕事の意味を考えさせたり、意見を言うような問いかけをする
・発達段階3を超えない限り新しいものは生み出せない
 (情報との向かい方も他者依存的)
 →権威主義的である(⇔LV4は「権威超越的」)

発達段階④:自律性が強すぎて他者の意見を無視する部下(自己主義的段階への対処法)

・自分独自の考え方をもち、明確な自己主張が出来る段階
自分の価値体系に縛られているという限界をもっている
・知識やスキルといった「水平的な成長」を求めてしまう
 ⇔「垂直的な成長」:器の拡大、認識の枠組みの変化
・自分の意見と自分を同一視する
 ⇒「自分の意見と自分は別物だ」という認識を持ってもらうようにする
 (※自分の意見を客観的に眺めてみることを促す

意識段階⑤:多様な部下との関わりから他者の成長に目覚める(自己受容・相互発達段階における変革型リーダへの成長)

・垂直的な成長は意識段階の低い人からのコーチングでは起こらない
 →上司の意識段階が高くないと、部下の垂直的な成長は支援できない
・自己の脱構築サイクルのプロセスが必要(EX:イチロー、羽生さん)
 →異質な存在と出会うように行動、新プロジェクトに積極的に参加など
 ⇒人間の成長・発達は葛藤を乗り越えていくプロセスである
・発達段階が高いことが良いことだという短絡的な考えはNG
 (突きつけられる課題がより過酷になっていく)
・透明な自己認識(自分と他者を区別しなくなる)
 ⇒他者の成功を支えることは、他者は自分の成長を支えてくれているということに等しい

新たに得られた知識・情報・気づき・考え方など

  • 「成人発達理論」の存在と概要
  • 人は自分より上の意識段階を理解することができない
  • 意識段階は急に変わらない(意識の重心)
  • 「水平的成長」と「垂直的成長」という区別
  • 「自分」と「自分の意見」は別と考える(意見を客観視する)
  • 発達段階が高いほどツラくなる面もある

『なぜ部下とうまくいかないのか』を読んで実行すること

  • 他者の成長を支えるということは、他者が自分の成長を支えてくれていると考えるようにする

『なぜ部下とうまくいかないのか』はこのような人にお勧めします

タイトルだけでなんとなく読んでしまいました。
部下を持つと必ず思ってしまうであろう
「なぜ伝わらないのか」「なぜ彼はこういう考えなのか」といった疑問を
成人発達理論という面からすっきり整理できる本です。

そもそも「成人発達理論」というものをはじめて知ったのですが
社内の”あるある”的な感じな人物(部下)達を4つ発達段階に分けて、
各段階の特徴と、その対処法を解説する感じの構成です。

本来はアカデミックな内容になりがちな内容かもしれませんが、
物語風に軽く仕立てているので、読みやすいと思います。

読み物としてはとても面白い本なのですが、
記載されている対処法のポイントがあまりに一般論過ぎる印象でした。
本に書いてあるような問いかけや促しで簡単に成長できるようであれば
そんなに苦労しないのですが、と思ってしまいます。
「意識の重心」は、結構重いものなのかもしれませんね。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!

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