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本を読み続ける中小企業経営者の読書記録

『良い値決め 悪い値決め』のレビュー

   

『良い値決め 悪い値決め』とは

タイトル:良い値決め 悪い値決め -きちんと儲けるためのプライシング戦略-
著者:田中靖浩
出版社:日本経済新聞出版社 (2015/7/16)

おススメ度
★★☆☆☆
(3点/5点満点)

『良い値決め 悪い値決め』の概要

売上重視が会社を不幸にする

・[良い売上げアップ=利益を増やす]⇔[悪い売上げアップ=利益を減らす]
・安ければ売れる時代が終焉
 ⇒ヤマダ電機のライバルがネットに変わってしまった
・[売上-コスト=利益]の罠(販売単価が一定という前提はありえない)
 ⇒儲けは「1個の儲けの積み重ね」と考える(1個の儲け×販売数量=全体の儲け)

DOGビジネス

・[デジタル/オンライン/グローバル]のビジネスは無料へと向かう
 ⇒ユニクロ・ニトリ等の大企業以外は対決困難
・戦わない道を選ぶためには値決めがカギ→以下の3つのステップ
 ①値下げのメンタルブロックを外す(良いものは高くて当然)
 ②値決めの数字を学ぶ(1個の儲けの積み重ね)
 ③値決めを成功させるマーケティングと心理学を学ぶ
・CATを目指すべき
[COZY:居心地の良さ、ANALOG:アナログ、TOUCH:共感・触合い]

値下げの成功と失敗

・成功条件は
 ①変動費の比率が低いこと(固定費体質)
 ②値下げで販売数量が大幅増になること←これが難しい
 ※②が難しい理由(自らのキャパシティの限界/ライバルの値下げ追随/顧客の消費感情)
・経営者の仕事は「MP>F」の状態をつくること
 (MP:全体の追加、F:固定費)

値決めの哲学を持つべき

・従来の常識「良いものをより安く」
 ⇒コストプライシングが前提(コスト+利益=売価)
・日本に敗れた米国では
 ⇒バリュープライシングが前提(売価-利益=コスト)
・顧客中心の思考が重要
「提供する商品・サービスが顧客を満足させているか?」
「安さを超えた価値・共感を提供できているか?」
 ↓
 大丈夫なら自信を持って高い値付け
 不安なら商品/サービスそのものを見直すべき

「まぜプラ」

・複数の儲けを組み合わせる
 ①ジレットプライシング(儲け薄+儲け厚)
 ②フリープライシング(無料+有料)→スマホゲーム
 ③O2Oプライシング(オンライン+オフライン)→設けるもの+楽しいものへ

「ここプラ」

・顧客に心地良いサプライズをつくる
・半額より無料(実は「3個買えば1個無料」の方が利益率もよくなる)
 →マイレージなど(ただし人間中心の固定費ビジネスではNG!)
・メッセージを変えるだけでも違う
 →(×)英語力が不足しています/(○)日本語を完璧に話せます
・行動経済学(ビジネス心理学)を利用
 →箱を小さくして実質値上げなど(価格には敏感、中身には鈍感!)

「くらプラ」

・アンカリング
・メンタルデコイ(不利なおとり)
・相手に不利なアンカーを始めに打ち込む
 →謝礼を「2~3万円」と言っておいて、実際に2万円にしたら激怒された例

「やわプラ」

・顧客の困りごと、悩み事、不安をやわらげる
・人間は損失回避を優先する→メリットを訴えるよりデメリットの回避をアピールする
・衣料品の「下取りセール」の例など

新たに得られた知識・情報・気づき・考え方など

  • 悪い値決めは、コストとライバルの価格しか見ない
  • 良い値決めは、顧客満足「高」を目指す

『良い値決め 悪い値決め』を読んで実行すること

  • 「1個の儲けの積み重ね」の意識を持つ
  • 「まぜプラ」「ここプラ」「くらプラ」「やわプラ」の考え方を取り入れる

『良い値決め 悪い値決め』はこのような人にお勧めします

稲盛和夫さんの「値決めは経営」とのお言葉は有名ですが、私がいる業界でもプライシングの難しさは年々高まっている気がします。
その理由はやはり「DOG」的な要素があるからだと認識し、危機感が高まりました。
対策として挙げられているのは「ジレットプライシング」「フリープライシング」をはじめとした定番の手法が多いのですが、値決めの重要性についてあまり考えたことの無い方にはお勧めです。
しかしながら「安さを超えた価値・共感を提供」は本当に難しいと思います。それが不安だと「所品/サービスを見直すべき」となると、これが困ってしまうんですよね・・・。
この本はあくまで値決めの本なので、それは別の本でヒントを得るということになりますかね。
いずれにしても「値決めの哲学をもつ」ということは重要だと思います。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!

 - マーケティング系, 書評