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本を読み続ける中小企業経営者の読書記録

『経営者になるためのノート』のレビュー

      2020/05/23

『経営者になるためのノート』とは

タイトル: 経営者になるためのノート
著者:柳井正
出版社:PHP研究所 (2015/8/25)

おススメ度

★★★★★
(5点/5点満点)

『経営者になるためのノート』の概要

経営者とは

・一言で言えば「成果を上げる人」、成果とは「約束したこと」
 →成果を考えるにあたって、社会における自分たちの存在意義、
  つまり「使命」を考えることが大事
 ⇒会社の使命と成果が結びついていることが経営の大原則

・経営者に必要な4つの力

  1. 変革する力(イノベーター)
  2. 儲ける力(商売人)
  3. チームを作る力(リーダー)
  4. 理想を追求する力(使命感に生きるもの)
「変革する力」

・目標を高くもつ
 →非常識をと思えるほどの目標を掲げる
 ⇒既存の延長線上では発想できないことに自らを追い込む

・常識を疑う
 →会社の成長を妨げる最大の敵が「常識」である
 →不安にとりつかれず、まずはやってみることが大事
 ⇒「危機感」に基づいて経営をすべきであって、
  「不安」に基づいて経営をやってはいけない
 ※不安に思うことは紙に書き出して正体をつきとめる

・基準を高くもち、妥協と諦めをしないで追求する
 →「質に対する意識」が大切である
 ⇒「質」の基準は「お客様にとって本当に良い」と思えるライン
 (「自分なりの基準」では意味がない)

・リスクを恐れず実行し、失敗したらまた立ち向かう
 →安定志向で安定成長している会社はない
 →リスクがないところに利益はない、リスクがあるところに利益がある
 →ただし、リスクはしっかり計算する

・厳しく要求し、核心を突いた質問をする
 →要求・質問をしないと、現場の仕事は「作業」になる
 (考える力の弱体化が顧客創造の障害になる)
 →要求をする場合「君だったら出来る」と言ってあげる(責任は上司がとる)

・自問自答する
 →「自分はできている」と思わないようにする
 →危機感をもってのぞむことが正常な経営

・上を目指して学び続ける
 →学び方:自分のことに置き換えて考える、実践してみる

「儲ける力」

・全てを「お客様のため」に徹する
 会社は誰のためのものか?→「お客様のため」が本質
 ※お客様を喜ばせるために必要な3つのこと
 ①お客様をびっくりさせようと思わないといけない
 ②お客様の声は大事だが、その1枚上手を行こうとする
 ③提供者である自分たちが本当に良いと思うものをつくる

・当たり前のことを徹底して積み重ねる
 →本当の儲ける力とは、地道なことが徹底して出来るところにある

・スピード実行
 「即断、即決、即実行」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」
 →時間をうまく利用した人だけが成功者になれる

・現場、現物、現実
 →リアリティに身をおいて商売をすることが大事

・集中する(捨てる勇気を持つ)
 →自信がないから分散する(お客様は自信がないものを見抜く力を持っている)
 ⇒「これをやらなかったらどうなるか?」と自問自答してみる

・矛盾と戦う
 →何とか解決策を見出すことにプロとしての付加価値が生まれる
 ※矛盾解決なしに、次なる成長はなし

・準備する
 →しかし、固執するのは成果である

「チームを作る力」

・信頼関係をつくる(それが始まりであり、全てである)
 →言行一致で首尾一貫した人間であるかどうかが基本

・チームを作り、チームを動かす
 →この力を磨かない限り、経営者は何も出来ないに等しい

・リーダーとはチームを勝利に導く人
 →自分だけを勝利に導くのではない

・100%全力で部下と向き合う(その人が納得するまで全力で関与)
 →表面上だけ付き合って、その人が変わるきっかけになることはありえない
 ⇒その人のためにどういうアドバイスをしてあげたらよいのか、
  自分の全てを総動員して考える
 (部下の未来を明るくするのがリーダーの仕事である)

・目標を共有し、一人ひとりの責任を明確にする
 →目標はしつこく繰り返し伝えて、はじめて共有できるもの

・任せて、評価する
 →自分の仕事だと思ったときに人は頑張る
 (仕事の成果=能力×モチベーション)
 →いったん任せたら半分は目をつむる(耐える)
  任せるときはゴールイメージを共有する
 ⇒任せたら評価をしっかり伝える

・期待し、長所を活かす
 →人間は期待されているかどうかを感じる力を持っている

・多様性を積極的に肯定する

・勝ちたいと誰よりも強く思い自己変革を続ける
 →「そこでいい」という会社はつぶれる

「理想を追求する力」

・会社にとって一番必要なのが使命感

・使命を全ての企業活動の中心に据える

・理想企業を目指して人生と対決するように生きる
 

新たに得られた知識・情報・気づき・考え方など

  • 質問・要求をしないと、現場の仕事は作業になる
  • 矛盾解決ナシに次の成長はない
  • 部下の未来を明るくすることがリーダーの仕事である
  • 目標はしつこく、繰り返し伝える必要がある
  • 人間は期待されているかどうかを感じる力を持っている
  • 会社の「使命」を考えることがとにかく大事である

『経営者になるためのノート』を読んで実行すること

  • もう一度読む

『経営者になるためのノート』はこのような人にお勧めします

ファーストリテイリングの柳井さんが、
自社の経営者育成用に使用しているものがベースとなっているようです。
タイトルに「ノート」とありますが、本文の周囲に書き込みスペースがあり
文字通り色々と記入できるようになっております。

卓越した経営手腕でユニクロを世界的企業に導いた柳井さんの言葉には
圧倒的な重みがあり、経営の本質が凝縮されているような気がします。
このような本は、結局は「誰が言っているのか」が大事なわけで、
当然ながら評論家やコンサルタントが書いた本とは説得力が全く異なります。

また、稲盛和夫さん系の本にでてくるような
道徳的、哲学的(宗教的?)な思想による記述は少なく、
経営者に求められる考え方や心構えをより具体的に、
鋭い観点で提示しているような印象を受けました。

いま、本の裏の値段を見たら「1,204円(税別)」となっていましたが、
このコストパフォーマンスはユニクロ以上と思われます。

個人的には過去最高レベルの良書です。
何度も読み返して、書き込んでいきたいと思いました。

経営者というよりは、すべてのビジネスリーダー必読の1冊です。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!

 - 書評, 経営(哲学系)