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『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』のレビュー

      2016/05/14

『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』とは

タイトル: アドラーに学ぶ部下育成の心理学 -「自ら動く部下」が欲しいなら ほめるな叱るな教えるな
著者:小倉広
出版社:日経BP社 (2014/8/12)

おススメ度

★★★★☆
(4点/5点満点)

『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』の概要

褒めてはいけない

・褒めることは上下関係が前提
(相手に期待していなかったという意味もある)

・コントロールしようとすると信頼を失う
 →独り立ちできるように支援する
 ⇒対等な「横から目線」の勇気づけを行う

・結果だけをみるから勇気づけができない
 →60%の達成率でもプロセスに注目して応援する

・「勇気づけ」とは困難を克服する力を与えること

・成果や能力ではなく潜在的な力に焦点をあてる
 →プロセスやチームの仲間としての存在に承認のメッセージを送る

・感謝やポジティブな感想(感情)を伝える

※「褒める」と「勇気づけ」の明確な分離は困難である

叱ってはいけない

・仕事は困難の連続
 →困難から逃げ出す原因は「勇気の欠乏」である
 →部下への指導(ダメ出し)は勇気くじきに繋がる

・「叱らずに勇気づける」の基本形
 → 主観伝達(決め付けはNG)
  +質問(考えさせて選択を委ねる。自分で意思で行動)
  +誘い水(意見が出始めたらやめる)

・YOUではなくIメッセージ(例:小泉元総理の「感動した!」)

・二次感情は一次感情に置き換える
 (×)怒り
 (○)がっかりした、不安だ、寂しい気分になった、など

・仕事での問題発生時
 →原因分析(犯人探し)は勇気くじきに繋がる
  (やるなら、コッソリと少人数で)
 →ソリューション(解決策の立案)にフォーカスする

・フィードバックは5段階で考える
 ①事実、②主観、③評価、④提案、⑤命令

教えてはいけない

・「ディーチング」は一方通行、正解を教える
 「コーチング」は双方向、自分で解決出来るように支援
 →正解はクライアント(部下)の中にある

・「教えない」人材育成はゴールの共有から始まる(What)
 →目標設定を上司と部下で行う
 ⇒目標は上司が押し付けず、部下が主体的に決定する
 Howは部下に委ねる(ホワイトスペース[余白]を作る)
 ⇒事実と主観を基本としつつ、誘い水と提案を織り交ぜる

・支援応需は事前告知が鉄則である

・「知識、技術」中心から「姿勢、意欲」中心の育成へ
 →姿勢、意欲があれば、自分から勉強を始める
 ⇒意欲を高めるのに勇気づけが有効

・定例面談という場を設ける
 →取り調べ尋問は大きな代償
 (上司本人がすっきりするだけで意欲開発ができない) 
 →接触頻度を上げて信頼関係を築く

・「あなたはどうしたいの?」とオウム返しの質問をする
 →「○○すべき」はNG

・悩む部下にヒントを与えるリソース補給
 「経験のリソース」:自分の体験など
 「視点のリソース」:違う視点で考えさせる
 「枠組みのリソース」:枠を取り払って自由を与える
※リソースの使い方には「質問」「独り言」「提案」の3つの方法
 ⇒いずれにしても決定を部下の意思に任せることが重要

自然の結末を体験させる

・歴史から学ぶためには一定以上の経験を自分で積む必要がある
やらされた体験では人間は成長しない
・信頼を重んじる(ピグマリオン効果、ゴレーム効果)

論理的結末を体験させる

・事前に約束し、学びを見守る
・嫌味や叱責は罰になる→明るくカラッと伝える
・気付かせるのではなく、気付く機会を邪魔しないことが目的
・人事考課に反映させる→フィードバック面談でのダメ出しはNG

課題を分離して境界線を引く

・アサーティブコミュニケーションが大事
・「横の関係」とは「建設的であるか否か」の捉え方
 (正しいか否かではない)
・部下の感情に責任を負ってはダメ
 (どのような感情を持つかは相手の課題)
・上司の仕事は環境を作ること
 (やる気の出るような環境、結末を体験させる環境)

新たに得られた知識・情報・気づき・考え方など

  • 仕事の困難から逃げ出す原因は「勇気の欠乏」である
  • 決定を部下の意思に任せることが重要

『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』を読んで実行すること

  • 出来るだけ感謝やポジティブな感想・感情を伝えるようにする
  • 定例面談という場を設ける
  • 支援応需は事前告知する

『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』はこのような人にお勧めします

アドラーブームの流れで様々な便乗本(?)が出ていますが
「会社における部下育成」に当てはめた内容の一冊です。
「嫌われる勇気」等でアドラーの基本的な考え方を理解した後だと、
違和感なくスラスラと読めると思います。

アドラー心理学のキーワードの一つである
「勇気づけ」の発言例がいくつか載っているのですが、
結局それって「褒めてる」ことと同じでは?と、何度も疑問に感じました。
「褒める」と「勇気づけ」の明確な分離が困難としておきながら、
「褒めてはいけない」というのはどうなのかと、少し気になりました。

定番の人材育成論に、後付けでアドラーをこじつけたような印象も受けますが、
色々と再認識させられる点はあると思います。
部下の指導に悩んでいる方は、一度読んでみるとよいと思います。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!

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